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「インナーコア」の科学的機能と動作パフォーマンスへの役割

「インナーコア」とは体幹深部に存在する筋群の総称であり、具体的には横隔膜、骨盤底筋群、腹横筋、多裂筋、そして胸腰筋膜によって構成されています。これらの筋群は、まるでシリンダーのように腹腔を取り囲み、内部の圧力(腹腔内圧、Intra-abdominal pressure: IAP)を調節することで体幹の安定性を高める働きを担います。体の中心に位置するこれらの筋群は身体動作に先行して無意識に活動し、四肢の運動を支える基盤となるため、運動機能の根幹をなす極めて重要な存在です。

特に注目されるのは「インナーコア」は単に強く収縮すればよいわけではなく、「いかに速く、適切なタイミングで収縮するか」がその機能的な指標であるという点です。これはHodgesの研究(1997)により、四肢の自発運動に先行して腹横筋が活動を開始するという知見に基づいています。例えば、腕を前方に挙げるような単純な動作でも、体幹の安定を確保するために腹横筋の活動が予め誘発されることが確認されています。このような無意識の姿勢制御は「予測的姿勢制御」と呼ばれ、四肢運動を支えるための自動的な機構とされています。

この予測的姿勢制御は動作を始める直前に体幹の安定性を確保し、運動中に不要な揺れや代償運動を抑制するために不可欠です。仮にこの機構が破綻すると、体幹の不安定化が起こり、表層筋(いわゆる「アウターコア」)が過剰に働いてしまうことになります。これにより、非効率な動作が助長され、腰痛などの障害につながるリスクが高まると考えられています。

また重量物の持ち上げやスポーツ動作のような高負荷の場面では、脊柱に対する大きな伸展モーメントが加わります。その際、脊椎の安定化には腹腔内圧の上昇が求められ、この圧力の調整こそが「インナーコア」の微細な制御能力に依存しています。腹腔内圧が適切に高まることで脊柱は圧縮され、安定性が増し、過度な前後屈曲や回旋といった動きが制御されるのです。これはまさに体幹の「内的ブレース」のような役割を果たしているといえます。

ただし、この「インナーコア」だけで姿勢制御が完結しているわけではない点にも注意が必要です。たとえば予測的姿勢制御は、「アウターコア」とされる表層筋、つまり腹直筋や外腹斜筋、脊柱起立筋群との協調的な活動によって成り立ちます。実際の運動局面ではインナーコアとアウターコアが同調的に働きながら体幹を安定させ、四肢の機能的な動作を可能にしているのです。いかにこの協調が自然に行われるかが、効率的な動作と障害予防の鍵となります。

初期のトレーニングではインナーコアを選択的に活性化させるようなアプローチ、たとえばドローインやブレーシングといった低負荷のトレーニングが推奨されます。これにより無意識下でのコア筋群の協調が促され、姿勢保持や四肢運動に先行する自然な反応が再獲得されることが目的とされます。しかし最終的にはこうした選択的なトレーニングから、より動的で統合的な動作へと移行していく必要があります。

このような観点からも「インナーコア」の機能は、姿勢制御だけでなくパフォーマンス向上や障害予防にも寄与する重要な要素といえます。逆にインナーコアの収縮の遅延や活動不全は、身体の安定性を低下させ過剰なアウターマッスルへの依存や関節ストレスの増加につながる可能性が高いのです。トレーニングやリハビリテーションにおいては、インナーコアの収縮タイミングとその自動化、さらにはアウターとの協調性を意識した運動学習が極めて重要です。体幹の中心であるインナーコアが機能してはじめて、四肢の運動は自由で機能的なものとなり、それがスポーツや日常動作の質を高めることにつながるのです。

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