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Lumbo Pelvic Rhythmと骨盤の安定性

ヒトの体幹運動において、腰椎と骨盤は密接な協調関係を保ちながら動いています。この協調的な運動パターンは「Lumbo Pelvic Rhythm(腰椎・骨盤リズム)」と呼ばれ、特に体幹の屈曲や伸展において重要な役割を果たしています。Lumbo Pelvic Rhythmとは上半身を前屈または後屈させる際に、腰椎と骨盤がある程度の時間差と運動比率で連動して動くメカニズムのことを指します。このリズムが適切に働くことで、腰部への過度な負担が回避され、脊椎と骨盤周囲の関節・筋群が効率的に連携して身体の安定性と可動性を両立させることが可能になります。

Lumbo Pelvic Rhythmの正常な運動パターンにおいては、体幹を前屈させるとき、まず腰椎が屈曲し、次に骨盤が前方に回旋(いわゆる前傾)します。この運動連鎖は“bottom-up”(下から上へ)の運動制御ではなく、“top-down”(上から下へ)で制御されており、脳脊髄系が適切なタイミングで腰部と骨盤に信号を送ることで成り立っています。一方で動作の途中でこの協調運動が破綻した場合、例えば腰椎ばかりが屈曲し骨盤の回旋が遅れる、あるいは逆に骨盤が過剰に先行するようなパターンでは、腰椎や骨盤周囲の軟部組織に過剰なストレスがかかり、腰痛や仙腸関節障害などの原因になり得ます(Leinonen, 2000)。

骨盤の安定性については、静的な「構造的安定性」と、動的な「機能的安定性」に分けて考える必要があります。構造的安定性は、仙腸関節や腰仙関節の形状と靭帯構造に依存し、一方の機能的安定性は筋肉の活動によって制御されています。特に腹横筋(transversus abdominis)、多裂筋(multifidus)、骨盤底筋群(pelvic floor muscles)、および横隔膜(diaphragm)などの深層筋群の協調的な収縮が、骨盤の動的安定性に大きく寄与しています(Hodges & Richardson, 1996)。

このような深層筋の共同活動は「インナーユニット」として機能し、Lumbo Pelvic Rhythmの正常化に必要不可欠です。例えば、体幹前屈時に腹横筋が適切なタイミングで収縮することで、腹腔内圧が高まり、腰椎が過度に屈曲しすぎるのを防ぎます。また多裂筋は腰椎椎体の後方から支えることで、前屈における腰椎の安定を担保しつつ、骨盤が円滑に前傾する余地を作り出します。このようにLumbo Pelvic Rhythmと骨盤安定性の両者は、筋活動のタイミングと協調性に大きく依存しているのです。

また動作解析の研究においても、Lumbo Pelvic Rhythmの破綻が腰痛患者に共通して観察されることが知られています。例えば、腰痛を有する被験者は、前屈時に腰椎の動きが先行しすぎて骨盤の回旋が遅れるというパターンを示すことが多く報告されています。このような運動パターンでは腰椎椎間板や筋腱付着部に局所的な機械的負荷が集中し、慢性痛の原因となります。

Lumbo Pelvic Rhythmの評価とトレーニングにおいては、腰椎の可動域、骨盤の可動域、股関節の柔軟性、そしてそれらに関連する筋の協調的収縮が重要な要素になります。特に脊柱起立筋とハムストリングスの過活動は骨盤の回旋を制限し、適切なリズムを阻害する要因となります。この点を踏まえ、腰椎伸展エクササイズや股関節のモビリティドリル、コアスタビリティトレーニングを通じて、腰椎と骨盤の協調的な動作の再教育を行うことが、臨床現場やアスリートの運動指導において有効とされています。

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