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暑熱順化と運動トレーニングに伴う発汗機能の適応

私たちの身体は運動や高温環境に繰り返しさらされることで、次第にそれに適応しより効率的に体温調節ができるようになります。特に注目すべきは深部体温や皮膚温が上昇した際の発汗機能の改善です。発汗は体温調節の主たる手段の一つであり、この機能の向上は熱中症予防や運動パフォーマンスの維持において極めて重要な要素となります。

運動トレーニングや暑熱順化が進むと、同じ深部体温に達した時点での発汗量が増加し、また同じ発汗量であっても汗に含まれる塩分濃度が低下することが知られています。これは汗腺の塩分再吸収機能が向上することを意味しており、体液の損失を最小限に抑えつつ、体温を効果的に下げる生理的適応と考えられています。このような変化は40℃以上の高温環境下において、中等度以下の強度でも連続して4~5日程度運動を行うことで観察されるようになります。

この発汗量の増加は汗腺の数が増えるのではなく、主に既存の汗腺の機能が高まることによって生じます。具体的にはアセチルコリンに対する感受性(コリン感受性)の亢進や汗腺の肥大化が関与しており、単一汗腺あたりの汗出力が向上することが発汗機能改善の本質です。またこれに伴って皮膚血流量も増加し、熱放散の効率が高まります。

さらに暑熱順化や運動トレーニングによって血漿量をはじめとする体液量が増加することも、発汗機能の向上に寄与します。血液量の増加は循環系の安定化をもたらし、発汗に必要な水分供給を円滑にします。加えて運動開始直後から生じる非温熱性発汗、すなわち体温上昇を伴わない発汗も、運動トレーニングによって顕著になります。これは身体が熱負荷に先んじて体温調節を開始する高度な適応とみなすことができます。

興味深いことに熱帯地域に住む人々は、一般に日本人よりも発汗量が少ない傾向があることが報告されています。例えば同一の深部体温に達するように運動を負荷した実験において、熱帯地域に住む被験者は日本人と比較して、特に高強度運動時においても発汗量が抑制されていたとされています。この現象は長期間にわたって高温環境に適応した結果、発汗に依存せずに皮膚血管の拡張による乾性熱放散、つまり蒸散を伴わない熱放散様式を主軸とする戦略が発達していることを示唆しています。これは体液の過剰喪失を防ぎ、脱水リスクを抑えるために有利な適応であると考えられます。

このような乾性熱放散様式の獲得は、生来の体質ではなく後天的な適応として日本人を含む他の人々にも認められます。実際に長期的に熱帯地に滞在した日本人においても、発汗量が減少し皮膚血流を介した熱放散が増加するようになることが知られています。このような適応は、体液の保存を優先する熱帯地特有の環境において生存上有利に働くと考えられています。

運動トレーニングや暑熱順化によって私たちの身体は発汗機能をはじめとする体温調節機能を大きく適応させることができます。これにより、高温環境下でも快適かつ安全に運動を継続することが可能になります。これらの生理的変化を理解し適切なトレーニングや環境順化の機会を設けることが、スポーツ現場や健康増進の観点からも極めて重要であるといえるでしょう。

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