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プライオメトリクスと障害予防

プライオメトリクスは主に筋の伸張―短縮サイクル(Stretch-Shortening Cycle:SSC)を活用することで、筋力とパワーの向上を目的としたトレーニング法です。この種のトレーニングは、ジャンプ、ホップ、バウンディングといった動作を通じて、身体が地面との接触時間を短く保ちながら、爆発的な力を発揮する能力を鍛えることができます。近年では、パフォーマンス向上だけでなく、スポーツ傷害の予防にも効果があることが注目されています。

例えばLauersenら(2014)のメタアナリシス研究では、筋力、バランス、そしてプライオメトリクスを含む多様な運動介入が、スポーツ傷害のリスクを平均で37%低下させることが報告されています。このような研究結果は単なる柔軟性向上やストレッチだけでは得られない、動的安定性や神経筋制御能力の向上が、傷害予防に重要であることを示唆しています。

特に膝関節に関する研究は多くHewett(2006)の研究によれば、女性アスリートに対するプライオメトリクストレーニングは、前十字靭帯(ACL)損傷の発生率を有意に低下させることが示されています。この研究ではジャンプ着地時の膝外反モーメントの減少や、股関節・体幹の筋力向上が観察されており、これらが傷害リスクの軽減に寄与したと考えられています。

プライオメトリクストレーニングの有益な効果のひとつは、関節のコントロール能力を高める点にあります。SSCを伴う動作において、筋は瞬間的に伸ばされたのち、即座に収縮を行う必要があるため、その反応を司る神経系の応答速度が要求されます。これを繰り返し訓練することで、身体は関節の急激な動きにも対応できるようになり、動的な安定性が増すと考えられています。特に股関節や膝関節、足関節といった下肢の主要な関節における安定性は、走行中やジャンプ時の怪我を防ぐうえで重要な役割を果たします。

また年齢を重ねるにつれて起こりやすいバランス能力の低下や転倒リスクに対しても、プライオメトリクスは有効とされています。Granacher(2013)の研究では、高齢者に対する低負荷のプライオメトリクストレーニングが身体コントロール能力や反応速度を改善し、転倒のリスク低減に貢献することが示されました。このことはプライオメトリクスが若年の競技者だけでなく、高齢者の健康維持にも応用可能であることを意味しています。

ただし、すべての人に対して無条件にプライオメトリクスが適しているとは限りません。特に関節の可動域制限や筋力不足、あるいは既往歴により怪我のリスクが高い個体においては慎重な導入が求められます。プライオメトリクスに含まれる「伸張性局面」、すなわち筋が伸ばされる際の力を制御する能力は、バイオメカニクス上でも非常に重要な要素です。この局面を適切にコントロールできなければ、関節や筋腱に過度の負荷がかかり、かえって傷害リスクを高めることになりかねません。

したがってプライオメトリクスの導入にあたっては、段階的な負荷設定、適切なテクニックの習得、個人の身体的背景に応じた調整が必要不可欠です。初期段階では、より基礎的な伸張性トレーニングや、関節安定化を目的としたバランストレーニングから始めることも有効とされています。

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