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外傷性動作機能不全

ケガをきっかけに動作に問題が生じることはとてもよくあることです。特に、痛みの影響で動作が変化してしまった場合、たとえ痛みがなくなった後でも、そのまま元の正常な動きに戻らないことが少なくありません。実際には損傷した部位が治っているにもかかわらず、身体の使い方に偏りが残っていることで、また別の場所に負担がかかり、再び損傷を招いてしまうこともあるのです。

たとえば、炎症や腫れ、あるいは固定によって動かせない状態が続いたことによって、筋肉のタイミングやコントロールに関わる神経と筋肉の連携、いわゆる「神経筋の協調性」が乱れるケースもあります。こうした神経と筋の連携が乱れると、たとえ筋力自体に問題がなくても、動作がうまくいかずパフォーマンスが落ちてしまうのです。

また、人間には「代償動作」と呼ばれる仕組みが備わっています。これは本来の動作が難しい時に、別の方法でなんとか目的の動作を行おうとする、いわば原始的な生き残りのための行動とも言えます。しかし、この代償動作は一時的な対応策としては有効でも長期的に見るとあまり良い結果を生みません。というのも、代償動作は効率が悪く体の他の部分に余計な負担をかけてしまうため、長く続けていると別の場所に痛みや不調が出る原因にもなってしまうのです。

こうした背景から、単にエクササイズを指導したり実行するだけでは、根本的な運動のコントロールの問題を改善するのは難しいと言われています。大切なのは、まず今の動作のどこに機能不全があるのかを正確に見極め、それを修正して正しい動作を再構築していくことです。特に、無意識のうちに染みついた動きやクセを改善するには、時間と適切な指導が必要になります。

痛みがある時に鎮痛剤を使うことは一般的な対処法の一つです。もちろん、痛みが和らげば動きやすくなりますし、日常生活にも支障が出にくくなるというメリットがあります。ただし、鎮痛剤によって痛みを一時的に抑えることで、本来は「痛みがあるからこそ体を守っていた反射的な安定化の仕組み」が働かなくなってしまいます。その結果、動作中の安定性が損なわれ、反応の遅れや運動のコントロール力の低下が起こることもあるのです。

また、スポーツや仕事への早期復帰を目指す方にとって、痛みが引いたからといってすぐに復帰するという判断は注意が必要です。一見、早く現場に戻れるというのは大きなメリットに見えるかもしれませんが、実際にはごくわずかな微細な損傷が体内に残っていて、それが長期的に悪影響を及ぼす可能性もあります。そのような小さな損傷は徐々に蓄積し、再発の原因になるケースも多く見られます。

ですので、痛みが治まったからといってすぐに復帰するのではなく、受傷前と同じレベルの機能に戻っているか、あるいは再発を防げるレベルの機能まで回復しているかを慎重に見極めることがとても大切です。そのためには、客観的な評価をもとに段階的なリハビリを行い、無理のないペースで復帰を進める必要があります。

怪我の治癒と動作の正常化は、必ずしも同時には進みません。体が治ったように見えても、動き方に問題が残っている限りは、再発や別の部位への負担を招く恐れがあります。だからこそ、痛みが消えた後こそが本当のリハビリのスタートとも言えます。正しい動作の習得と、それを支える神経筋の協調性の回復は、再発を防ぐだけでなく、より良いパフォーマンスへとつながっていきます。

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